研究概要 |
動作域の域値を調査するビデオ・ポジション・アナライザ装置は, 予算の関係で入手が遅れ, 小学校等へ持ち込んでの調査が思うようにできなかった. しかし, オープンスペースを持つ学校での床座の授業および床座での児童の姿勢の観察, 現在使われている学校用いす・机と人体との関係, 机の広さ個数と教室の面積, 収納物と収納家具の量の問題など, 基礎的な問題点を検討する時間が得られた. そこで, その中の幾つかは実験に移して寸法等を検討した. 床座において一番問題と思われた点は, 児童の姿勢であった. ほとんどの児童は胡座か横座りの姿勢で授業をしているので, 背中は丸背になっているか脊椎を側湾させていたことである. そして今一つの問題点は座机の高さであった. いすを用いるときの机の高さは, 座高の1/3を目安にした差尺の考え方を導入して求めたが, 座机にはそれに匹敵する差尺の考え方が, 何も存在しないのである. 床座におけるよい姿勢といえば, 正座が考えられるが, 正座を行うにはかなりの訓練を必要とするので, 強要するのは現実的ではない. 床座においてできるだけ正しい姿勢をとらせるには, 次善の策として座具の導入が考えられる. 成人の座具については, そのおよその知見が得られていたので, それを応用・検討してみた. このねらいは, 単に座姿勢を矯正するばかりでなく, 差尺の原点ともなる座位基準点を明らかにし, 座机の, 座机の適正な高さを考えたかったからである. 4〜12cmの高さの座具で実験し, その有効なことの目安を得ることができた. 机の狭さ感に関する問題は, 現在の教室の面積と児童数, 児童の持参する物の収納方法, 学習の方法などが複雑に絡みあっていて, 一面からだけの見方は危険である. しかし窮屈感を抱いていることも確かであるので, 机の脚間の問題をとりあげた. その他としては, 設計者に人体寸法が使いやすいように, 身長を基準としての略算法などに関して検討している.
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