研究概要 |
本研究の目的は古建築の設計基礎概念として「かまえ」を明らかにしようとするもので, 外部空間(配置計画)や内部空間(断面計画)の基本計画を明らかにしようとするものである. (A)発掘された古代寺院遺跡としては藤原京薬師寺伽藍, 古代の金堂を残す発掘された寺院として唐招提寺の金堂の計画と配置計画, および薬師寺のような双塔式伽藍配置をもつ比蘇寺伽藍の実測を行って, これらの寺院の基本計画を分析した. その結果, 期待したような成果が得られ, はじめている. (B)古代・中世・近世を代表する重要な仏堂遺構については, まず禅宗様仏殿が本研究の目的とも合致する点が多いことが予測されたので, 主として方三間裳階付きの禅宗様仏殿をとりあげ, そのほとんどを対象とした. また, 一部, 和様の本堂についても分析を行ったが, 小屋構造まで建立当初の寸法を残しているものが少ないので, これらを勘案の上, 次年度で研究対象とする. 方三間裳階付き仏殿の分析結果は所期の成果をあげつゝあり, 「かまえ」から「ホ割」にいたる経過をたどりうる可能性がある. 近世では黄檗宗寺院の仏殿をとりあげ, 配置計画と断面計画の両者を, 宇治万福寺, 金沢大乗寺, 高岡瑞龍寺(後記二者は禅宗)において検証した. これらの一部については日本建築学会に発表ずみである. (C)その他, 連綿と遺構を残す楼門・神社本殿・塔のうち, 楼門, 神社本殿のら, 春日造の本殿を主としてとりあげ分析を進めている. これらについても基本的な計画を徐々に明らかにしつゝあり, 枝割の考え方に一石を投じることができるのではないかと考えている. 以上のように, 62年度ではかなり見通しをつける事ができたが, 次年度でなお詳細な検討を加えることにしている.
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