本研究では、(1)シリカの重合反応速度、(2)見か粘度と固体表面へのシリカの付着量との関係および(3)シリカの沈殿により貯留層の透水性低下について検討した。各々の実験条件は、(1)に関して、pH8〜9、温度30℃〜50℃、NaCl無添加、初期溶解性シリカ濃度約520ppm、全ケイ酸濃度約570ppmとし、また、(2)に関して、pH8〜9、温度30℃、NaCl濃度0〜1moldm^<-3>、初期溶解性シリカ濃度約250〜1500ppmとする。なお、これらの実験開始時において、溶液中におおよそ10%のポリケイ酸が存在している。一方、(3)の実験は模擬貯留層として充填層(ガラスビーズ充填層、φ0.3mmおよび1mm)を用い、注入沈殿量を4〜40mgの範囲において行った。 本実験条件下においては以下のことがわかった。 (1)溶解性シリカの減少速度は、核となるポリケイ酸の表面積および過飽和溶解性シリカ濃度の2乗に比例する。 (2)溶液の見かけ粘度が増加すると、固体表面へのシリカの付着量も増加する傾向が見られる。 (3)沈殿が生成されると溶液の見かけ粘度は急激に増加する。 (4)過飽和濃度およびNaCl濃度は固体表面へのシリカの付着に影響をおよぼしその影響は過飽和濃度およびNaCl濃度によって異なる。過飽和濃度およびNaCl濃度が大きく沈殿が生じる場合、過飽和濃度またはNaClが大きいほどシリカは早く付着し始める。一方、過飽和濃度またはNaCl濃度が小さく沈殿が生じない場合、固体表面へのシリカの付着量は少ない。 (5)流量の減少におよぼすシリカの沈殿の影響は、ガラスビーズの粒径によって異なる。ガラスビーズの粒径が0.3mmの場合、流量はゆるやかに減少する。一方、ガラスビーズの粒径が1mmの場合、流量は実験開始直後に急激に減少し、その後回復する。
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