研究概要 |
熱水タイプ地熱貯留層における地熱発電では, 生産井の噴出流体から分離された蒸気は発電蒸気のタービンへ導入し, 一方熱水はそのまま地下へ還元する方式をとっている. しかし, この方式は熱水の有する莫大な熱エネルギーを全く利用することなく地中へ戻すことになるので有効な熱採取法とは言い難い. そこで, この熱水をできるだけ蒸気に変えて採取できれば, 生産井の生産能力が一層向上するとともに, 蒸気量増産のために坑井新掘とその費用が不要になるなどの利点が考えられる. このような観点から, 和田・大牟田は蒸気強制循環式揚水法を提唱し, 加熱蒸気の圧入によって生ずる沸点の低下と坑井内水位低下に伴う地層からの熱水流入量の増大が蒸気生産量および坑井水位の変化等との関係について実験によって検討した. その結果は以下の通りである. 1.蒸気圧入による坑底水位低下量は, 蒸気圧入チュービングの深度が深くなると大きくなる. 2.圧入蒸気は, 坑井内のチュービング出口の圧力の下で凝縮しない程度の加熱度でよい. 3.流動坑底水位低下量と蒸気及び熱水の生産レートは, 加熱蒸気圧入レートの増加に比例して増大する. 4.今回の実験条件の下で, 加熱蒸気の圧入によって生ずる水位低下に伴う熱水流入レートの増加による蒸気生産レートの増大効果(ガスリフト効果)が認められた.
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