研究概要 |
本年度は, 硫化物鉱床から産出する希金属資源について地球資源的立場から考察した. まずこれら希金属資源量の評価に関するもっとも特筆すべき事柄は主目的金属として採掘されているのではなく, Cu, Pb, Znなどのベースメタルの製錬時の副産物として回収されている点である. 個々の元素についてみると, GeがZn, Cu, Pbの, BiがPb, Cuの, In, CdがZnの, TlはさらにCdの, As, Seは硫化鉱物全般の, TeはCuの, ReはMoの副産物が主体となっている. またAgは75%, Auにおいては5〜10%が硫化物鉱床からの副産物として回収されているものである. 次に, これら個々の希金属についてアメリカ鉱山局の資料をもとにして, 西暦2000年までは成長率を考慮し, 以後は成長率を考慮せずに耐用年数を計算してみた. その結果は耐用年数が西暦2000年までの元素にGeが, 西暦2025年までにはBi, Ag, In, Cd, As, Au, Tl, Sbが, 西暦2050までではSeが存在した. しかしながら, このようにして求められる耐用年数はFe, Al, Cu, Znなどの大量生産金属の耐用年数とは基本的に異なっている. すなわち, これらの希金属の耐用年数は大量生産金属の製錬中間精製物がすべて保存され, 利用された時の数字であり, 現在の世界の製錬業の状勢とは一致しない. むしろ, これらの希金属の耐用年数はベースメタルのCu(2022年), Zn(2018年), Pb(2010年)と同等とみなす方が現実的である. 以上のことから, 希金属資源量の評価は副産物として産出する金属と主目的金属として産出するものとでは基本的に異なり, 副産物として産出する希金属については, 主目的金属の耐用年数に置き換えて考えるべきであるとの結論が得られつつある.
|