研究概要 |
非晶質合金は従来, 液相あるいは気相からの高速急冷によってのみ得られると考えられてきたが, 最近, 固相同志の拡散反応によっても非晶質化が可能な合金系が相次いで発見されている. これらの合金系は, 過冷却液体の自由エネルギーが急冷固体のものよりも低いと想定される系に限られ, 固相反応としては, 二種の金属の積層膜を用いた拡散反応, 超微粒子金属同志の拡散反応などを利用している. このような固相反応非晶質化に際しての構造変化, 物性変化についてはほとんど理解されておらず, このため, 本研究ではCo-Zr系に着目し, Co, Zr積層膜を作成し, 固相反応非晶質化のプロセスを, 高分解能電子顕微鏡により詳細に観察する一方, 磁気的性質の変化も追及することを目的としている. この研究を行うには, 超高真空スパッタ装置によりCo-Zr積層膜を作成する必要があり, 本年度(62年度)はアルゴンビーム・スパッタ装置の作製を行った. 現時点でのビーム源としては, 加速電圧4kV, ビーム電流20mAの中性アルゴンビームであり, 真空排気はクライオポンプにより行っており, 到達真空度は10^<-7>Tarr.以下である. 本装置により, Co-Zrアモルファス合金の作成を, Co, Zrを同時スパッタすることにより試みたが, 比較的良好なアモルファス合金膜が作成され, Co, Zrのスパッタリングが良好な条件でできる事が証明された. 本63年度は, スパッタ用回転ターゲット, 基板加熱装置, 膜厚モニターなどの設置を行い, その後, Co, Zr積層膜をスパッタリングにより作成し, 基板加熱により固相反応非晶質化を試る. 非晶質化反応プロセスについて透過電顕による断面観察, オージェ分光法による組成変化などにより調べ, 反応に伴う磁気特性の変化を, 直流振動型磁力計により測定する.
|