研究概要 |
オーステナイト(γ)およびフェライト(α)ステンレス鋼の単結晶同士および単結晶と多結晶をAr雰囲気中で温度(1073-1518K), 時間(50-200hr)で拡散接合した結果, 次の事柄が判明した. γ/α相界面はもとのγ相内に形成され, 接合面からγ相内に移動する. 相界面は接合面に平行でよい平面性を示し, 界面近傍にはvoidや析出物は観察されなかった. 旧接合面ではほとんどの拡散対でvoidが見られるが長時間の拡散により消失する. またカーケンダル, ポロジティーは認められなかった. 界面の移動距離は時間の1/2乗則で記述できた. 界面近傍のγ相内にはTwinの発生がみられ, 界面からTwinの先端までの長さは, γ相内のNi, Crの濃度変化の大きい領域の長さとよく一致していた. 界面近傍のNi, Cr濃度は両相間の平衡濃度とよい一致を示し, 両相とも界面から十分離れた箇所のNi, Cr濃度は拡散前のそれらとほとんど差はなかった. 多くの拡散対において, 相変態してできたα相は, 一般にもとのα相の結晶学的方位を継承して粒界は形成されなかった. しかしながら, γとα相の接合方位関係が, 低エネルギーで亜整合な界面を作り得るKurdjumor-Sachsの関係から, わずかずれた方位関係にあらかじめ方位制御した拡散対においては, 変態に際して核生成が観察され, 新しいα相ともとのα相間には小傾角粒界が形成され, γ/α相界面ではよりK-S関係に近い関係をとるものが支配的であった. このことは接合方法関係が安定構造をもつ相界面の方位関係に近い時は変態の核生成が生じ, 大きな回転を要する場合には接合によって決定される相界面がそのまゝ移動し, 新たな核は生成しないことを示している. γ/α異相双結晶を室温で引張試験した結果, 破壊に至るまで相界面および接合面での割れは観察されず, ネッキングがみられた.
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