複相材料の緒性質と含まれる異相界面の構造の間の関係の解明に異相双結晶を用いた研究は不可欠と言える。今年度において本研究では、二相オーステナイト・フェライト・ステンレス鋼(γ/α-SS)双結晶の作製技術の確立に成功し、γ/α異相界面の形態と相間の方位関係について明らかにした。 Fe-15Cr-15Ni(γ-SS)単結晶とFe-30Cr(α-SS)単結晶を密着させ高温で焼鈍すると、拡散によりγ→α相変態が起き接合前の界面はγ相側へ移動する。γ/α-SS双結晶をこのような固相拡散接合法により成し得たことは今年度における大きな成果の一つである。 接合前のγ相とα相の方位関係がKurdjumov-Sachs(K-S)関係に近い場合、拡散接合により得られたγ/α-SS双結晶中のγ相が相変態してできるγ相は元のα相(α_o相)と異なる方位をもつもの(α_n相)となることがわかった。これらα_n相の方位を調べたところ、α_n相は、α_o相に比べ、K-S関係とのずれが小さくなるようなγ相に対する方位関係になる結果を得た。γ/α-SS多結晶を用いた実験では、α_n相ができないα_o相成長型の核散相変態が観察される例がほとんどであった。γ/α-SS双結晶による系統的な実験により、γ→α相変態の挙動の相違はγ、α_o両相の方位関係に影響されることがわかった。さらに本研究で得られた結果は、γ→α相変態がα_n相生成型、α_o相成長型のいずれになるかについて次のような判断基準が存在することを示唆していた:α_o/α_n相間粒界エネルギーと、α_n/γ相間界面エネルギーの和がα_o/γ相間異相界面エネルギーよりI)低くなる場合→α_n相生成型、II)高くなる場合→α_o成長型、つまり、α/γ界面エネルギーはK-S関係の時に極小となるものの接合前の方位関係がK-S関係と大きくずれている場合はα_o/α_n粒界エネルギーが大きくなり、結果としてα_n相が出現できない、というものである。
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