研究概要 |
NaclとNa_2O-B_2O_3系融体間で鉄およびチタンの分配平衡実験を行った. 実験温度は900および1000°C, 実験時間は3〜10hr, 雰囲気は大気, アルゴンまたは脱酸アルゴン気流(100ml/min)とし, 溶解には縦型抵抗炉を用いた. るつぼは高純度アルミナ質のものを用いた. 本実験におけるNa_2O-B_2O_3系融体組成は, Nacl-Na_2O-B_2O_3三元系状態図で二液相分離が生じる範囲, すなわちNa_2O/B_2O_3モル比が約2/3以下である. 予備実験として, Na_2O-B_2O_3系融体中の鉄およびチタンの溶解度を, 900°Cで攪拌せずに96hr放置することにより測定した. その結果, Na_2O/B_2O_3濃度比の増加に伴って, 鉄およびチタンの溶解度はいずれも上昇し, 例えば, Na_2O・2B_2O_3組成ではそれぞれ2.9%および4.6%であった. そこで, 本実験では, Na_2O-B_2O_3系融体中の鉄およびチタンの初期濃度を1%未満とした. NaclとNa_2O-B_2O_3系融体間の鉄の分配比は, Na_2O/B_2O_3濃度比の上昇に伴って増加し, このモル比が1/3付近で最大値を示した後, 減少した. 同一のNa_2O/B_2O_3濃度比で比較すると, 高温ほど, また, 雰囲気が酸化性であるほど, 鉄の分配比は大きくなった. 一方, チタンの分配比はNa_2O/B_2O_3濃度比が上昇すると減少する傾向を示した. また, 高温ほど大きな分配比となるものの雰囲気の影響は顕著ではなかった. 本研究結果より, 低酸素分圧の雰囲気下で, Na_2O/B_2O_3濃度比の低いNa_2O-B_2O_3系スラグとNaclを用いることにより, 鉄をスラグ(酸化物)相にとどめたまま, チタンをNacl中に抽出する精練法が考えられる. 今年度の実験結果からはるつぼからNa_2O-B_2O_3系融体中に溶け込むAl_2O_3の, 鉄およびチタンの分配比におよぼす影響を明らかにすることはできなかったため, 次年度において検討する.
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