本研究は、還元拡散法による希土類機能性材料として希土類磁石を選び、拡散に関する実験を行なったものである。当初はCo中へのSmの拡散、及びFe中へのNdの拡散の両方を取り上げたが、後者の場合NdはFe中には容易には拡散せず、長時間の熱処理によっても進展が見られなかったので、研究の後半では前者のCo-Sm系に的を絞った。 Co中へのSmの拡散は、「研究成果報告書」に詳述した理由から、溶融Sm-Co合金とCoブロックで拡散対を構成したが、拡散が起きる前にCoブロックの表面が不均一に溶け出す現象を抑えることができず、このため拡散層厚が非常に不均一になった。そこで、Coブロックを溶融Sm-Co合金の蒸気と接触させる方法に切り換えたところCoの溶出が抑えられ、かなり均一な厚さの拡散層が得られたので、以後はこの方法によった。最も成長の速い相はSmCo_5で、その内側にSm_2Co_<17>の相がわずかに成長した。最も外側に現れているSm_2Co_7の相は試料断面の研磨中に失われることが多く、層厚の測定ができなかった。結果として1050、1100及び1150℃の各温度で、SmCo_<17>相におけるSmの拡散系数が求められた。 本研究で採用した方法をヒントに、Sm_2O_3-Caチップの混合物をCo粉末と直接には触れないようにして還元拡散プロセスを行なわせたところ、カルシウム分による汚染の少ないCo-Sm合金が得られた。これは言わば「還元・揮発・拡散法」と呼ぶべきもので、比較的蒸気圧の高いSm等には有用な方法であろう。また、一旦SmCo_5の層を大きく成長させた後、Sm蒸気の無い条件で1100〜1200℃に保持すると、SmCo_5相をSm源とする拡散が進行してSm_2Co_<17>相が大きく成長することを確認した。この二つの結果は、工業的に未完成な還元拡散法によるSm_2Co_<17>素磁石材料の製造につながる有望なものとして、今後も検討を加える予定である。
|