研究概要 |
当初は, 62年度にCa_2Sn, Ca_3N_2およびCa_3P_2の生成自由エネルギーならびにそれら化合物のCaO-CaF_2系フラックスに対する溶解度を温度, フラックス組成の関数として求めることを計画したが, 比較的実験が困難なCa_3N_2を除くカルシュウム化合物の生成自由エネルギーを化学平衡法により求める一連の実験を行い以下のような結果を得た. i)2Ca(l)+Sn(l)=Ca_2Sn(s);ΔG°=-86,400+18.96T(cal/mol)1000°〜1120°C ii)3Ca(l)+P_2(g)=Ca_3P_2(s);ΔG°=-156,810+34.42T(cal/mol)1000°〜1300°C iii)3Ca(l)+2As(l)=Ca_3As_2(s);ΔG°=-173,000+41.31T(cal/mol)1000°〜1300°C iv)3Ca(l)+2Sb(l)=Ca_3Sb_2(s);ΔG°=-173,600+38.08T(cal/mol)1000°〜1300°C v)3Ca(l)+2Bi(l)=Ca_3Bi_2(s);ΔG°=-146,200+30.52T(cal/mol)900°〜1050°C またこの他, Ca_2Sn化合物の反応については, Caの溶解度が低く, Ca-Sn間の相互作用が無視出来るFe-C-B合金を用いた実験を行い, Ag合金を用いた実験結果と比較したが, 2CaC_2(s)+Sn(l)=Ca_2Sn(s)+4C(s)の反応に対する平衡定数の対数と反応温度の逆数との関係が両者ともほぼ一つの直線で表されることが知られ, Ag合金を用いた実験結果に一定の普遍性のあることがわかった. さらにまた, Ca_2SnとCa_3P_2については, これまでにCaを主体とするフラックスによる溶鉄からの脱すず, 脱りんに関して報告されている熱力学的性質(特に, γ°ca〓Snとγ°ca〓p)を検討して, 従来の結果と本実験から推定される値とがかなり異なると言う結果を得, CaOの生成自由度エネルギーの評価に問題があると言う新たな知見が得られた. これについては, 現在更に検討を進めている. この他, CaO-CaF_2スラグ中の1,Sb,As,Bi,Snの熱力学的性質を明らかにして, それぞれの元素が上述のカルシウム化合物として溶解しているために, これらの元素が鉄等金属中に不純物として溶解している場合は, 強還元性雰囲気でのみ本スラグへ分離除去できることを示した.
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