研究概要 |
昭和62年度にはCa_2Sn,Ca_3P_2,Ca_3As_2およびCa_3Sb_2の生成自由エネルギーを測定した。本年度は前年度に引き続き化学平衡法により、Ca_2Pb,Ca_3Bi_2の生成自由エネルギーの測定実験を行った。実験原理は前年度と同様である。Bi化合物を例にとると、石英管内に真空封入した黒鉛るつぼ内で、あらかじめ作製した固体CaC_2とCa_3Bi_2を溶融銀と平衡させ、銀中に溶解するBi量を測定することにより、Ca_3Bi_2(S)+6C(S)=3CaC_2(S)+2Bi(in Ag)の反応の生成自由エネルギーを求め、既知のCaC_2の生成自由エネルギーとから、Ca_3Bi_2の生成自由エネルギーを求めた。実験はこの原理に基づき875℃〜1050℃の範囲で行った。 反応3Ca(l)+2Bi(l)=Ca_3Bi_2(S)の生成自由エネルギー変化は、△G^0=-696400+195.6Tj/Molとなった。また、同時に測定できる銀中のカルシウムとビスマスの相互作用係数絵εBi^^<Ca>は上記温度範囲でεBi^^<Ca>=69.6-120000/Tとなった。 Ca_2Pbの生成自由エネルギーに関しては、実験温度範囲でCa_2Pbが安定でないために、実験が難しいため、予定した実験を完了しておらず現在継続中である。 昨年度を含め現在までに得られた結果をまとめると、生成自由エネルギーとして、Ca_3P_<2i>△H^0=-653500+144.0TJ/mol,Ca_3As_2:△G^0=-723800+172.8TJ/mol,Ca_3Sb_2:△G^0=726300+159.3TJ/mol,Ca_2Sn:△G^0=-354000+79.3TJ/mol,Ca_3Bi_2:△G^0=-696400+195.6TJ/molが得られた。これらの結果をまとめて実際の鋼の還元精錬への適用可能性を検討した。各元素を酸化製錬する場合と還元精錬する場合の境となる酸素分圧を計算し、これらより工業的に十分なトランプエレメントの除去が可能であるかを定量的に求めた。その結果、還元精錬により、合金元素の酸化損失なく、脱りんと同時にAs,Bi,Sb,Snの不純物を鋼から除去できることがわかった。
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