希土類マンガナイトのうちLnMnO_3(Ln=希土類)で表わされる斜方晶系および六方晶系のものについて900〜1200℃、1〜10^<-22>atmの酸素分圧の間で相境界を求め、多相平衡の式によりこれらマンガナイトの高温での熱力学諸量を求めた。Ln=La〜Dyの斜方晶系についてはCsとPmを除く全て、及びLn=Ho〜Luの六方晶系については全ての希土類元素に対して熱重量測定と電気伝導度の等温酸素分圧依存性を測定して、相の分解点における温度、酸素分圧については両者の一致の良い結果が得られた。さらに相境界での存在相のX線回折図より反応式が求まり、これらマンガナイトは各希土類三二酸化物とマンガンの一酸化物とに分解平衡することにより、反応に関与する酸素の式量から平衡定数を導出して自由エネルギー変化、エンタルピー変化、エントロピー変化の各量を求めることができた。これら各値を比較して斜方晶系では希土類の原子番号の増加とともに相は不安定になっていくことが分かった。また六方晶系ではややその傾向があるが、その差は小さいものであった。各希土類マンガナイトについて化学ポテンシャル図を作成し、安定存在領域を明確にしてさらに熱重量分析の結果より不定比性も測定したので精度の良い議論ができた。またDSCを用いてこれらマンガナイトの高温熱容量の測定や、さらに高次構造を有する例えばBaLn_2Mn_2O_7相のようなマンガナイトの相転移のエンタルピーについてもいくさか測定できた。今後の展開としては、この高温熱容量やエンタルピーを精度良く測定して今回得られた結果の第三法則処理が可能となるようにできれば高温熱化学量の精度は上がるものと期待される。
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