昭和62年度に実施した、実験の成果を踏まえて、ステンレス鋼粉の擬似等方圧成形における緻密化と組織形成について、補足実験およびメカニズムについての解析を行った。試料温度の推定法の確立、完全緻密化のための成形温度および圧力条件の決定、軸方向と径方向の寸法比の決定、成形過程における組織形成の特徴の把握、および緻密化のメカニズムの解明などが本年度の成果である。成形過程において試料温度は成形時間に対して簡単なべき関数で表されることがわかった。すなわち、成形時(圧力付加時)の温度は、一義的に決定できた。完全緻密化のための成形温度および圧力条件は、前年度に報告した通り、790℃で694MPa、950℃で347MPaであった。成形過程において、原料粉の凝固組織は溶体化し、ついで成形温度に依存して再結晶が起こり、さらに高温になると正常粒成長が起こるといった組織変化過程をたどる。付加圧力が600〜800MPa以上、成形温度が1050〜1150℃の範囲にサブミクロンの粒径を有し、かつ完全緻密な成形体を得る条件が存在する。緻密化速度をこれまで提案されている緻密化機構にもとづいて解析した結果、本成形法の場合、塑性流動が主な緻密化機構であり、一定の成形温度に対して、どの程度の成形圧力が必要であるかが明確になった。
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