遷移金属を主要合金元素とするアルミニウム基急冷凝固合金の凝固組織および析出組織について主に準結晶相の生成形態を中心に明らかにすると共に、これらの急冷凝固合金(リボン状)の固化とそれらの組織および高温機械的性質(ヤング率、剛性率)について検討を加えた。 AlーMn系急冷凝固合金における電顕組織の観察から、準結晶が生成する最小マンガン濃度は約2wt%であり、その生成組成範囲が広いことが判明した。また、分布形態はマンガン濃度の増加と共にセル粒界偏析→共晶→初晶樹枝状晶の構成相として変化していく。時効析出によって生成する準結晶は、主にリボン状薄膜の表面層またはセル粒界に優先析出することが明らかにされた。このような析出準結晶でマトリックス〈111〉方位に平行な電子線で得られる回折像は15回対称を示す。この回折像の生成理由について収束電子線回折結果を踏まえて考察した。 上述の急冷凝固合金の固化を行い、得られた固化材の機械的性質、高温弾性挙動について検討した。 熱間プレス+熱間押出により得られた固化材の機械的性質は同組成の鋳造材とくらべ延性が極めて高いことが示された。これらの合金の弾性率の室温以上での測定を行った結果、約200℃以上で認められる粒界すべりによる弾性緩和現象がマンガン約3%以上で現われるAl_6Mn析出粒子により抑制され、これにともない内部摩擦(約300℃でピークが現れる)の大きさも減少し、5%Mn以上ではほぼ消滅する。このような現象についてマクスウェルのモデルに基き考察を行った。以上の結果は、Al_6Mn粒子が高温クリープ(粒界すべり)に対し抑止効果を与えることができることを示唆する。
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