研究概要 |
潤滑状態の評価法の一つとして, AE法を応用して, 塑性加工中, 工具面と加工材面との間で発生する応力波を, 圧電素子センサを用いて検出している. そして, 検出信号をリングダウン計数率, パワースペクトル分析, エネルギ発生率と波高率に処理し, これらの処理値から潤滑・焼付きの評価を試みた. 実験では, アルミニウム平角線の平面ひずみ引抜き加工を行い, 引抜き速度, 断面減少率を変化させた. 潤滑油には, ポリブテンおよびポリブテンと灯油の混合油を用いた. 潤滑状態の評価には相当油膜厚さを導入し, 加工後の加工材面, および工具面の表面粗さとの関係を調べた. また, 応用波の基本的性質を調べることを目的として, リングダウン計数率を求めた. 得られた主な結果は次のようである. 1)加工後の線材表面および工具面の表面粗さより, 潤滑領域を良好な潤滑領域, 焼付きの発生・成長する領域, 完全焼付きの領域に分類することができる. 2) リングダウン計数率としきい値電圧との関係より, しきい値電圧が大きくなると, 油膜厚さ比の大きさによって, リングダウン計数率は, 直線的に小さくなる領域, 複雑な変化, あるいは上に凸の放物線を描いて小さくなる領域, ほぼ一定の値を示す領域の3つの領域がある. そして, この3つの領域が, それぞれ良好な潤滑領域, 焼付きの発生・成長する領域, 完全焼付きの領域に対応する.
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