前年度には、アルミニウム線材を引抜き材に用いて、AE法を応用した潤滑状態の評価法を確立できた。 本年度は、高強度材であるステンレス線(SUS304)を加工できるように、引抜き装置のパワーアップを行った。また、AE装置からの出力である振幅分布、エネルギー処理値、引抜き力の成分は、PC9801V×41にすべて取り込み、各種の処理と制御を行うようにした。 具体的に改良できた点は次のようである。 ・パワーアップ用のモータには、高速応答トランジスタインバータドライブ方式のSVモータを用い、そのパワーは7.5kwである。 ・モータの回転数、トルクの制御が安易にでき、短時間で引抜き速度一定の定常状態の引抜き加工ができるようになった。 ・モータのトルクが大きくなり、ステンレス平角線(0.4^<mm>×2.0^<mm>)を加工できるようになった。なお、ステンレスはSUS304で、容体化処理を行い、引張強さは60kgf/mm^2である。 ・実験データとそれらをもとにした計算結果は、すべてパーソナルコンピュータを通して、ハードディスクに記録できるようにした。 今後の問題点として、次のことを解決しなければならない。 ・引抜き力とダイス面に働く力の測定には、工具動力計を使用しているが、引抜き力がおおきいために、ストレインワイヤと片持ばりを応用している関係で、断面減少率の設定が困難である。 ・ステンレスの加工では、潤滑油として、主にトリクレと脂肪酸の混合油が用いられているが、加工条件、引抜き速度を変化させ、潤滑油の最適条件を見出すと同時に、潤滑機構を解明する。
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