レーザーラマン分光法を鉄鋼材料の腐食研究手法として確立するために本年度は以下の研究を行った。 1.鉄ならびに低合金綱(耐候性綱2種、普通綱1種)の水滴下腐食時の腐食生成物の"その場"ラマン測定セルを作製した。セルは小型電熱板で、上に置かれた綱試料の温度制御が可能となっている。試料は水平面上に置かれており、試料面の水滴による腐食の生成物をそのままラマン分光できる。実験は23°C、35°C、50°Cの各温度で、溶液種を変えて、時間の関数として測定された。腐食生成物は初期にはγ-Fe00Hが主であるが、その他α-Fe00H、α-Fe203、γ-Fe203、ならびにFe304が条件により生成してくる。また、水滴下でのアノード部(水滴中心部)とカソード部(水滴外縁部)での腐食生成物組成の違いを検討した。 2.高温酸化実験測定用ラマン分光セルの制作。前年度試作した、300°Cまでの高温大気腐食実験用の"その場"ラマン分光セルの基本性能を調べた。この装置の用いた実験は一部始めたが未だ充分なデータは得ていない。 3.光りファイバー利用の遠隔操作ラマン分光法用装置。分光器と離れた場所にある反応箇所を計測するために光ファイバーでレーザー光ならびにラマン光を伝送するシステムを試作し、その基本性能を調べた。装置はレーザー光伝送光ファイバーからのラマン光消去用の小型2重分散分光器、試料からのラマン散乱光をラマン分光装置に導く光ファイバーからなっている。光ファイバー導入に伴い、レーザー光は約1/3光量損失し、またラマン散乱光の集光効率は約1/3に落ちる。現在この効率の現象を小さくするために、集光系レンズなどの最適化を計っている。
|