研究概要 |
誘導放射能の減衰が大きいAl-Li系合金を核融合炉候補材料として考える場合, 使用環境である高温高圧純水との化学的共存性すなわち腐食挙動の検討が必要である. 本研究はAl-Li系合金の腐食機構という観点から, 実用を越える広範囲組成のAl-LiおよびAl-Li-Mg合金を実験的溶製し, これの電気化学的性質, 浸漬腐食試験をおこない, 耐食性材料開発の指針をえることを目的とした. 溶製合金の電気抵抗を測定の上, マティーセンの法則を適用した結果, ほぼ目標値に近いLiを含有する合金がえられた. 0.5M-NaCl水溶液中にてアノード分極曲線を測定し, 1〜2%Li合金は純Alより耐食性を示すことが推定され, 高Li合金は著しく耐食性の劣化を示した. 沸騰および高温高圧水(150°C)中における浸漬腐食試験をおこなった結果, 重量増加が認められた. これは表面皮膜形成に起因し, 皮膜を剥離法にて除去して真の腐食量を求めた. 腐食量は1〜2%Li合金系が最小となり, 特に4%Mgの添加が顕著であった. 良好な耐食性を示す場合, 皮膜形成量は少なく, 耐食性劣化を示す場合に皮膜量が多くなることから, 本合金の耐食性は表面皮膜の性状に支配されることがわかった. 高温水中における腐食試験後の溶液のpHを測定した. 耐食性良好な合金の場合, pHの変化が小さく, 高Li合金の場合はpHの上昇が観察された. 溶液を原子吸光分析法で調べた結果, Liの溶出が認められ, pHの上昇は活性金属Liの選択的溶出に起因すると解釈した. さらに腐食過程におけるpHの経時変化を調べた結果, 溶液のpHは浸漬初期に上昇し, 浸漬後期ではpHの上昇が緩慢となる. 以上の結果から, 高Li系合金の腐食には合金表面層の脱Liが大きく関与し, 低Li系では緻密な表面皮膜を形成することにより良好な耐食性を示すことがわかった.
|