核融合路材として、誘導放射能の減衰の大きいことが望まれ、これの高温高圧純水中における耐食性の検討も重要である。本研究ではAl-Li-X系合金中、誘導放射能減衰の大きいSiをXとしてとりあげ、高周波溶解路にてAl-1〜2%Li-1〜5%Li合金11種類を作成した。バルク材について、0.5M-NaCl水溶液中におけるアノード分極曲線の測定をおこなった。Al-Si合金のEcorrは純Alに対し約0.8V貴側に位置し、この電位からアノード電流の急上昇が認められる。Siは耐食性向上に有効と考えられるが、Si量依存性が小さく、1〜5%Siはほぼ相似の関係にある。Al-Li-Si系合金はAl-Si合金の挙動に類似し、1〜2%Li添加の影響は認められなかった。高温高圧純水中におけるAl-Li-Mg合金の腐食挙動は室温0.5-M-NaOH水溶液中における結果と良い対応性が認められた。本研究では液体急冷法によって作成した薄膜試料を用い、直流四端子法によって求めた浸漬初期およびt時間浸漬後の比抵抗をそれぞれRo、Rtとして、△R=Rt-Roの関係から電位差△RをもってAl-Li-Si系合金の耐食性評価をおこなった。Al-Si系合金の△Rの経時変化はSi量とともに減少し、アノード分極曲線測定結果と良い一致が認められ、Siの有効性があきらかとなった。同様のことはAl-Li-Si系合金にも当てはまるが、Li添加の影響は検出されなかった。Al-2Li-Si系合金の△Rは5Si>1Siの関係にあり、△RとSi量との相関性は認められなかった。高Si合金は初析Siの分布・形状が大きく、初析Siの存在によって不均一腐食を呈し、これが△Rに反映するものと考えられる。しかし初析SiとLi含有量との関係は不明であり、不均一食を示す合金系に対し電気抵抗法の適用に問題が残された。
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