研究概要 |
当初の計画では鉄-ニッケル混合超微粉の常圧焼結による緻密化と粒成長の研究を予定していたが, より重要と考えられた鉄超微粉の加圧焼結による緻密化と粒成長について調べた. (目的)鉄超微粉を常圧焼結することにより結晶粒度が約0.5μmの緻密焼結体をすでに作っているが, 本研究では常圧焼結法よりも低温で緻密化させることが可能な加圧焼結法を用いて, どの程度緻密化温度が下げられ, より微細組織のものが作りうるかを検討した. (方法)原料粉末としては, 市販の鉄超微粉(平均粒径0.02μm:酸素量は15質量%)を用い, 金型成形法により相対密度が18%の圧粉体を作った. 加圧焼結は水素雰囲気(露点213K)中で, 昇温速度0.17K/S, 温度673-973K, 時間1.8Ks, 応力100,200MPaの条件で行った. 得られた焼結体の相対密度, 結晶粒度, 硬さなどを調べた. (結果)1.焼結体がほぼ完全に緻密化する温度は, 無加圧の場合の973Kに比べて, 100,200MPaの加圧下ではそれぞれ約150,300K以上低くなった. 加圧焼結下の緻密化速度は, 粒界拡散型の拡散クリープ機構に基づくコーブルの緻密化速度式によって計算した値に近かったが, 詳細は検討の必要がある. 2.緻密で低酸素焼結体のうち, 最低の焼結温度の下で得られたものの結晶粒径は無加圧の1.2μmに対し, 100,200MPa加圧焼結体ではそれぞれ約0.5, 0.15μmとなり, とくに200MPaの焼結体の値は極めて微細であった. なお, 同一焼結温度の下では, 結晶粒径に及ぼす加圧力の影響はほとんど認められなかった. 3.緻密な焼結体の硬さ(Hv)は, 普通の粒径のものが約85であるのに対し, 加圧焼結体のHvは最大385に達した. そして, Hvと粒径の平方根の逆数との間には, 約0.15μmまでの範囲内では, Hall-Petchの直線関係が認められた.
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