研究概要 |
多結晶チタン酸バリウムにランタン系不純物を添加すると, 約300Kのキュリー点近傍で電気抵抗が著しく増加する現象がある(PTC特性と呼ばれている). しかし, この特性は単結晶では起こらない為に, 結晶粒界が大きく影響していると言われている. その上, 電気電動機構がまだ解明されていない. 従って本研究の目的は伝導機構及び電動に対する粒界の寄与を解明する点にある. 昭和62年度に於ては, 伝導機構の解明に主眼を置いて, 低温(77K〜300K)での誘電特性と抵抗を測定した. 不純物としてはLaとGdを0.04〜0.07mole添加した. その結果,次のような結果を得た. 1)何の場合も,添加量が0.06mole以下では, 10〜100KHZの周波数の交番電場の下で低温側(77K〜130K)で誘電損率及び正接で誘電緩和によるピークが確認された. 2)交流抵抗においても誘電緩和によるピークが確認された. 3)1)及び2)で得られた誘電緩和ピークの活性化エネルギーの値はほぼ一致した. 4)添加量が増加するとこのピークが消え, 他のピークが現れることが確認された. そこで, 低濃度で現れる誘電緩和ピークをFrolichの誘電理論で解析を試みた結果, ポーラロンが伝導に寄与している可能性が大きく, しかもこのピークは単一緩和でなく, 非常に幅広い活性化エネルギーを持つ事が判明した. この現象に対する理由は種々考えられるが, 多結晶による影響が最も大きな要因の一つであると推測される. この考えに基づいて, 次年度では試料作製時に於て結晶粒径を制御して, この点を明確にする予定である. なお, 研究開始後一年であるので, まだ結果は論文としては発表しておらず, 学会での口頭発表のみである.
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