当該年度の研究成果を以下にまとめた。 1.62年度 多結晶セラミックスの物性を研究する場合、試料の再現性が大きな問題になる。また、電極が試料との間にどの様な影響を与えるか詳細に調べないことには、測定により得られた結果が試料内部の物なのか、表面におけるものか、または電極による反応層によるものなのかが判明しない。したがって完全に再現性があり、試料本来の物性が測定できるような作製法、および環境を確立する必要があった。試行錯誤の結果、今回の研究に最適な試料作製法が確立され、電極にはIn-Gaを用いるのが最適であることが判明した。また、焼結後の試料を粉末状にしてX線回折をした結果、単相になっていることが確認され、結晶構造のずれは確認されなかった。 2.63年度 結晶粒界がPTC特性に与える影響を調べるために、まず伝導機構解明する必要がある。そのために前年度までに確立した試料作製法および電極により用意した試料の直流抵抗、誘電特性を測定した。その際、以前にはほとんど行われていない極低温領域での測定を液体ヘリウムを持ちいて行った。その結果低温部に誘電緩和による吸収ピ-クが現れ、解析の結果この吸収ピ-クは、ポ-ラロンの形成によって誘起されることが判明した。直流抵抗の結果も踏まえ、n-型BaTiO_3の伝導機構はポ-ラロン伝導であるという結論を得た。 3.平成元年度 PTC特性に対する結晶粒界の影響を見るために、焼結後の冷却速度を変化させた試料の低温及び高温での直流抵抗、誘電特性を測定した。過去2年間で伝導担体がポ-ラロンであることがわかったので、伝導担体とPTC特性との関係から詳細に解析を行った。その結果、PTC特性は空孔が結晶粒界から結晶粒内部へ拡散することによりできる高抵抗相の厚さに支配されているという結論を得た。
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