不純物添加されたBaTiO_3は異常な正の電気抵抗温度依存性(以下PTC特性と略す)を示し、サ-ミスタ-等の機能性実用材料として幅広く使用されている。しかし、この物質は実用性が先行し、PTC特性の機構その物は未だ不明である。この特性の解明には、伝導担体の同定と結晶粒界の寄与を明らかにする必要がある。しかも、この両者は互いに深い相関関係がある。本研究は先ずBaTiO_3にLa又はGdを添加した試料を作製し、低温領域に於ける誘導特性と直流抵抗の測定より、担体の解明を行い、次に結晶粒界に形成される高抵抗層の厚さを変化させ、PTC特性に対する粒界高抵抗層の寄与と、PTC特性向上の因子を追求した。 以上の実験の結果より、次の知見と結論が得られた。PTC特性に示すBaTiO_3の担体が伝導電子かポ-ラロンかで、過去20年議論の的であったが、これらの議論は結晶がPTC特性を起こす正方晶から立方晶への相変態点近傍(約400K)での実験結果に立脚していた為に、問題を非常に複雑にしている。しかし、我々の低温域の誘電特性と直流抵抗の実験結果は、非断熱的小ポ-ラロンが伝導性を与えている事を直接示した。これらの実験結果は現在までの理論的予測と完全に一致した。次に、試料の焼結後、高温(1673K)から急冷され高濃度のBa空孔を含む試料と、徐冷され粒界高抵抗層が十分に成長した試料の直流抵抗と誘電特性を測定した。その結果、粒界高抵抗層が十分に成長した試料のPTC特性は粒界抵抗層が未成長の結晶に対して10^4程度向上する事が確認された。しかし、誘電特性の測定より、高抵抗層が成長した試料では担体である小ポ-ラロンの濃度は多少減少していた。これらの事実より、担体の濃度より、高抵抗層の成長がPTC特性には敏感に影響を与えることが解明された。しかし、担体の同定はPTC機構を解明する上で非常に重要な学術的意味を持つ。
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