研究概要 |
本研究の目的は、アルミニウム合金の材料特性を、電子・原子のミクロなレベルから再評価することである。前年度は、分子軌道計算を行い、アルミニウム中の合金元素の個性を表す新しい合金パラメータを決定した。それらは、原子間の結合次数、イオン性、電子の部分状態密度などである。本年度は、これらパラメータを用いて、以下の諸性質の評価を行った。 1.格子定数 合金元素を添加すると格子定数は変化する。興味深いことには、合金元素が、遷移金属の場合、その原子サイズが大きいほど合金の格子定数は小さくなる。これは原子間の電荷移行により、成分原子の大きさが変化するためであり、原子のイオン性と格子定数との間には相関が認められた。 2.合金固溶体の固溶限 合金元素が非遷移金属の場合、そのS,P電子の部分状態密度がアルミニウムのそれに似ている元素ほど、良く固溶することがわかった。一方、遷移金属の場合、そのd電子の仮束縛状態がフェルミ準位近傍に現れて状態密度を大きく変えるため、一般にそれら元素の固溶限は小さい。 3.遷移金属不純物の拡散の活性化エネルギー 原子間の結合次数が高いほど、拡散の活性化エネルギーは大きくなった。 4.遷移金属不純物による残留抵抗 フェルミ準位でのd電子の部分状態密度の大きさにより、残留抵抗の変化を整理することができた。 5.遷移金属不純物の磁気的性質 スピンを考慮した計算を行い、種々の3d遷移金属の局在磁気モーメントの大きさを求めた。3d遷移金属の中では、クロムとマンガンのみが大きなモーメントをもち、アルミニウム中で磁性不純物として振舞うことがわかった。 この他、再結晶温度や状態図の整理を行った。
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