本年度は昨年度に得られた知見に基づいて、まず銀合金のプラズマ酸化の特色を明確にする比較研究として、プラズマを使用しない通常の空気中での酸化挙動を研究した。次に、プラズマ酸化をAg合金(Ag-Al、Ag-Cd)に適用し、その有効性を検討した。 空気中でのAg-Al合金の酸化は、溶質Al濃度1.5〜4.5at%(0.3〜1.2wt%)、酸化温度400〜900℃で行なった。いずれの条件の酸化でも、母相Ag中に微細なAl酸化物が析出する内部酸化のみ(外部酸化なし)が進行することが確かめられた。更にこれらの合金の酸化挙動は、酸化温度によって大きく異なることが明らかとなった。大別すると低温(400〜600℃)と高温(700〜900℃)域での2種類の酸化挙動である。電気抵抗は、高温での酸化では酸化前よりも減少するのに対し、低温酸化では増加することが見い出された。これらの原因を明らかにする為に行った酸化による重量変化測定、透過電子顕微鏡観察、ESCA分析より、Ag-Al合金を空気中で酸化すると、析出酸化物は高温域では化学量論的なAl_2O_3であり、低温域では0の過剰な且つ極微細(30【similar or equal】以下)なAl酸化物であることが判明した。 次に、Ag-10at%(12wt%)Cd合金及びAg-2.2at%(0.56wt%)Al合金のプラズマ酸化を650℃〜700℃の温度域でマイクロ波プラズマを用いて行なった。組成観察、硬さ測定の結果より、これらの合金がプラズマにより内部酸化されることが初めて見い出された。その上、このプラズマによる酸化は、通常の空気中での酸化よりも、酸化速度が速く且つ強度増加も大きいことが判明した。
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