研究概要 |
コロイドは分析化学的には, エアロゾルに代表されるように従来分析対象ではあったものの, 微粒子であるが故の特性, つまり電磁波と超微粒子との間にある特殊な相互作用については, SERSなどの実験は行なわれているがそれらの特性を積極的に利用した分析法の試みは殆ど行なわれていない. 最近, 金属超微粒子が融媒などの化学的作用はもとより磁性体など新しい工業材料として注目されている. 一方, 金属超微粒子はそのサイズによる量子的効果を始めマクロな物性では評価できない特殊の性質を示すことが分光学的に知られ始めている. そこで, 本研究では金属超微粒子(金属コロイド)の持つ分光学的特殊性に着目し, それを利用した分析法について検討した. 金属コロイドとして, その調整法が比較的良く知られている銀コロイドを対象とした. 銀コロイド溶液は, 安定剤としてポリビニルアルコールを加えて, 硝酸銀をホウ素化水素ナトリウム, またはクエン酸鉄を還元する方法で調整した. 両方法による銀コロイド溶液はいずれも可視・紫外吸収スペクトルで400nm付近に吸収を持ち, 赤黒色を呈した. 文献データなどと比較してコロイドの粒径は約100〓程度と見積った. 本研究では, 銀コロイドが光共鳴器として作用することを期待して, 銀コロイドと色素の混合系で, 銀コロイドの存在量の色素の分光学的情報に及ぼす影響を検討した. 色素としてはローダシン6G(R6G), 4, 5-ベンゾインドトリカルボシアニン(BICC), エリスロシンB(EB)を用いて, 吸収, 蛍光, ラマンスペクトルへの影響について検討した. R6G-銀コロイドの系では, 銀コロイドの存在比が増すにつれ蛍光強度は弱くなり, ラマン散乱強度は増大した. 一方, EB-銀コロイド系では逆に蛍光強度が銀コロイドの存在により大きくなる傾向にあった. これらのことから, 蛍光量子収率が小さな場合には増感されると考えられた.
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