62年度の研究を継続し、半自動接触分析装置の実用化を目指すとともに、長光路細管セルによる接触反応の高感度な吸光度測定について研究した。また、本半自動分析の有用性を示すために、従来の流れ分析方式(フローインジェクション方式)によって新たに生じる接触分析の問題点を明らかにした。 1.流れ方式接触分析の問題点:報告者の開発したCuやMnの接触定量法を用い、流れ分析方式の問題を研究した。その結果、反応管を短くして感度のよい流れ系にすると、細管内にポンプで溶液を送る際生ずる脈流が反応物質の混合比を変え接触反応により増幅されて脈動が現れ、定量を困難にすることが分かった。また、遅い反応では長い反応管を使うため、目的成分が試料溶液注入時の1/(10)以下に希釈され、バッチ法よりも相対感度が悪化することが分かった。 2.接触分析法の半自動化:1のような問題点のない方式として空気をキャリヤーに用いる半自動接触分析装置を62年度の研究で試作した。本年度は、この半自動分析装置を更に改良して反応室兼吸光度測定用セル(光路長1cm、約0.3ml)を組み込み、反応の制御が特に難しいメチルオレンジ-臭素酸塩系接触反応を利用する極微量硫黄の定量(10秒台の反応)に応用した。その結果、手操作によるバッチ方式に比べて、絶対感度で10倍よく、装置に注入した試料溶液の希釈も同程度に抑えることが可能であることが分かった。また、硫黄を繰り返し定量した場合の標準偏差も、手操作によるバッチ方式に比べて約1桁小さくできた。 3.長光路細管セルを用いる高感度接触分析:本年度は、2の方式を基にして、長さ30cmの長光路細管セル(62年度に試作)を組み合わせた半自動分析装置も開発した。バナジウムの接触定量に応用し、従来の1cmセルに比べて約30倍近く高感度な定量ができることを確認した。
|