接触分析法は高感度簡易法として有用であるが、反応温度や時間、試薬濃度を厳密に制御する必要である。近年、反応試薬を細管内に連続的に流し微量試料溶液を注入して反応や測定を行う流れ方式の分析法が開発され、この方式を用いると上記の因子の制御が容易となり操作性が向上した。しかし、流れ分析方式によって新たに起こる問題についてはまだ十分研究されていなかった。本研究は、流れ方式による接触分析の問題を明らかにし、その問題点のない新しい方式の半自動接触分析装置(吸光度測定)を開発した。 1.流れ方式接触分析の問題点:報告者の開発したCuやMnの接触定量法を用い、流れ分析方式の問題を研究した。その結果、反応管を短くして感度のよい流れ系にすると、細管内にポンプで溶液を送る際生ずる脈流が反応物質の混合比を変え接触反応により増幅されて脈動が現れ、定量を困難にすることが分かった。また、遅い反応では長い反応管を使うため、目的成分が注入時の1/10以下に希釈され、バッチ法よりも相対感度が悪化することがわかった。 2.接触分析法の半自動化の試み:1のような問題点のない方式として空気をキャリャーに用いる半自動接触分析装置を開発した。このために反応室兼吸光度測定用セル(光路長1cm、約0.3ml)を試作し用いた。反応の制御が特に難しかった硫黄の接触定量(10秒台の反応)に本装置を用いたところ、手操作によるバッチ方式に比べて、絶対感度で10倍よく、硫黄の定量誤差も約1桁小さく、良好な結果が得られた。 3.長光路細管セルを用いる高感度接触分析:2の方式を使えば細管内でも試料の希釈を最低限に抑えることができる。長さ30cmの長光路細管セルを試作し、このような測定ができる半自動接触分析装置を開発した。バナジウムの接触定量に応用し、従来の手操作によるバッチ法に比べて約30倍高感度な定量が可能となった。
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