研究概要 |
各種の置換基を含む一連のクマリンおよびフラボンを合成し, これらの蛍光性有機試薬を用いる選択性の高い微量金属分析法を開発するための検討を行い, 以下の知見を得た. 1.フラボンについては, 3-ヒドロキシー7-メトキシ誘導体がモリブデン(VI)共在下でのタングステン(VI)の選択的高感度試薬であること, 補助錯化剤としてニトリロ三酢酸を含む系では3, 5, 7, 2′, 5′-ペンタヒドロキシ誘導体との配位子置換反応速度にニオブ(V)とタンタル(V)とでは十分な差があること, 3-ヒドロキシ誘導体との錯形成速度にアンチモン(IV)とアンチモン(V)とでは十分な差があることを見出した. 2.クマリンについては, 過ヨウ素酸塩による酸化反応にともなう蛍光強度経時変化は4-メチルー6, 7-ジヒドロキシ誘導体が最も大きくこの反応は微量金属イオンの共存により加速されること, 4, 5-ジヒドロキシ誘導体がベリリウムの優れた蛍光定量用試薬であることを見出した. 上記の研究と並行して, 標記の研究課題を遂行するにあたって必要となる基礎的知見を得るために以下の研究を行った. 3.各種補助錯化剤を含むニオブ(V)およびタンタル(V)錯体と4-(2-ピリジルアゾ)レゾルシノールとの配位子置換反応の平衡と速度を研究し, 錯体の溶存化学種およびその反応性の差について定量的な知見を得た. 4.蛍光比色分析の感度向上を検討する目的で, 3-ヒドロキシフラボン誘導体およびそのモリブデン(VI), タングステン(VI)錯体のシクロデキストリンによる包接反応を研究した. また, 包接速度をストップトフロー法で解析した. 5.ジルコニウムおよびハフニウムとセミキシレノールオレンジとの錯形成反応の平衡と速度を研究し, 配位水分子交換速度定数の評価から両金属の反応性の差を定量的に明らかにした.
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