研究概要 |
半導体レーザーを用いるフローインジェクション分析用超高感度検出器の開発とその利用に関するフローシステムの最適化について基礎的に検討するとともに, 本研究で購入した日立製KK-1型フローインジェクション検出器との比較評価を行い, レーザー分光と長光路フローセルと組合せ利用による流通式化学計測法の超高感度化の可能性が基本的に明らかとなった. 次年度はこの超高感度検出器の応用について具体的研究を進める予定である. 1)半導体レーザーを用いる超高感度検出器の開発 レーザー分光の光源として半導体レーザー(日立HL780IE;波長788.2nm)を用いた流通式化学計測法用検出器を試作し, IC産業や医療産業等で使用されている超純水中のシリカ(ケイ酸塩)のフローインジェクション分析法による超高感度定量に成功した. すなわち, 810nmに最大吸収波長を持つケイモリブデン酸青反応系に対し, 788nmのレーザー光を適用したところ, 光路超10, 20, 50, 100mmの4種類の長光路フローセルにより, 極めて効果的に検出感度向上が計れることが実験的に明らかとなった. しかもレーザー光の直進性と非散乱性が生かされて, ベースラインの吸光度も低レベルのままで推移することを認めた. さらに100mmのフローセルを用い電気的増幅を試みたところ, 超純水中で5μg/1以下と言われているケイ酸塩検出が可能なレベルまで検出感度を到達させうることが分かった. 2)有限要素法によるフローシステムの最適化 拡散対流方程式に有限要素法を初めて適用し, フロー分析システムの最適化を計り高感度化を達成するための諸検討から, ピークの広がりは管径, 管長, 流速, 分子拡散係数の4因子により精密制御できることが新たな知見として得られた. これにより, 次年度に必要な長光路フローセルの最適長さや流路系の設計指針をほぼ確立できた.
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