研究概要 |
1.近赤外半導体レーザーは, 小型かつ高出力で汎用性に優れ, また価格の点からも実用性の高い励起光源である. 本研究では, これを利用する分光分析法について研究した. 2.半導体レーザーを光源とする多光子励起蛍光分析法の研究 近赤外半導体レーザーの出力は数10mW程度であるが, その良好な集光性を利用して多光子励起法により, 紫外・可視域に吸収バンドをもつ化合物を蛍光測定できると考えられる. そこでペリレン, フルオレセイン, ローダミンなどの色素について, 2光子励起法による分析法について検討した. 現在まだ予備的な検討の段階ではあるが, ペリレンの場合で10^<-6>M程度まで分析できることが判明した. 本法は小型光源の特徴を利用した光ファイバーセンサー等への応用も期待できる. 3.半導体レーザー励起蛍光法による酵素イムノアッセイの研究 近赤外蛍光色素の一種であるインドシアニングリーンは, 過酸化水素並びにFe(II)の共存下で強く蛍光消光される. パーオキシダーゼは酵素反応により過酸化水素を消費するため, この反応を利用することにより酵素活性を求めることができる. そこで市販の酵素イムノアッセイに基づくインシュリン測定キットを利用し, インシュリンを分析する方法について検討した. すなわち抗体固定化ビーズに試料である抗原, ついで酵素標識抗体を結合したあと, インドシアニングリーン, 過酸化水素, Fe(II)を含む試薬により酵素活性を測定した. 現在のところ0〜1mVの範囲で検量線が作成できるが, その感度は市販キットを越えるには至らなかった. 今後, インドシアニングリーンと過酸化水素の相互作用, Fe(II)の役割, 酵素により過酸化水素を消費したときの蛍光発現現象のメカニズムなどを十分検討することにより, 一層の高性能化がはかれると期待している.
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