昨年度の成果に基づき、β-シクロデキストリン(以下CyD)を界面活性にしてこれを水中化学種の捕集材として利用する方法について基礎的検討を進めた。界面活性にする方法として、β-CyDのOH基のいくつかを酪酸エステル化することを試みた。酪酸クロリドを用意し、混合割合を変えてβ-CyDとピリジン中で反応させることにより、組成の異なる界面活性CyDを合成した。生成物は、高速液体クロマトグラフィー、ファーストアトムボンバードメントイオン化法を用いる質量分析法により分析した。各生成物はプチリル基を1〜6個含む混合物であることが分った。β-CyDと酪酸クロリドを1:11の混合比で反応させたものには特にブチリル基3及び4個のものが多く含まれており、水溶性、界面活性とも良好であることが分った。これを使い、p-n-ブチルフェノールを試料とし起泡分離条件の検討を行った。 まず、pHの影響を検討したところ、酸性ないしpH8までの領域ではほぼ一定の回収率が得られた。CyDの安定性等を考慮し、試料のpHは緩衝液を加えて7〜8に調節することとした。次いで界面活性β-CyDの添加量について検討を加えた。試料溶液375mlに含まれるp-n-ブチルフェノールの量を5.0×10^<-6>モルとして検討した結果、界面活性β-CyD量は15mgで充分p-n-ブチルフェノールを定量的に回収出来ることが明らかになった。この量はモル比にして約1:2となる。数種の化合物について起泡分離を試み、回収率を調べた結果、アミルフェノール、ヘキシルフェノール等についても定量的に回収が可能であること、p-ブチル安息香酸では52ー57%と言う結果を得た。分子認識能は弱いが、発現されているものと考える。大学付近の民家井戸より採取した水を使っての添加実験も良好な結果を与え、選択的フェノール類の濃縮定量法として充分利用できることを確認した。
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