本研究は起泡分離法に分子認識機構を持たせる事でその機能拡大をはかることを目的とした。まず市販されている基本的かつ安価なシクロデキストリンについて起泡分離の可能性を検討し、ドメチルーβーシクロデキストリンの定量的濃縮が可能な事を見出した。しかし、これを水中溶存種の起泡分離に適用する検討を行ったところジメチルーβーシクロデキストリンと包接体を作る分子でも起泡分離は出来ない事が分った。そこで、シクロデキストリン自身を界面活性にして利用することを試みた。 界面活性にする方法として、βーシクロデキストリンのOH基をアルキルエステル化することでいくつかの界面活性βーシクロデキストリンを合成した。起泡分離には内径35mm、長さ405mmで底部に半融ガラス板を持ったパイレックスガラス製分離管を用いた。起泡分離濃縮した各成分の定量は述相系HPLCによった。合成した界面活性βーシクロデキストリンの中でOH基を酪酸エステル化したものが水溶性、界面活性とも良好であった。これについてHPLC、FABーMS等でキャラクタリゼーションを試みた。 そこで、p^-n^-ブチルフェノールを試料とし、起泡分離条件の検討を行なった。分離の際のpHは4〜8が適当であった。界面活性βーシクロデキストリン量の影響をp^-n^-ブチルフェノール濃度5×10^<-6>モル/375mlにおいて検討した結果、15mg以上の界面活性βーシクロデキストリンが必要であった。p^-n^-ブチルフェノールについて定量性を検討したところ0〜5×10^<-6>μgの範囲で直線の検量線が得られた。同様の条件を用いて各種化合物の回収率を検討した。ブチルフェノール、アミルフェノール、ヘキシルフェノール等の定量的回収が行えた。ブチルアニリン、ブチル安息香酸、t.ーブチルフェノール等は回収率が低かった。ゆるい分子識別効果が認められたと考える。混合物についても試み、単一の場合と 類似の回収率を得た。井戸水への適用も試み満足すべき結果を得た。
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