研究概要 |
フェライト法は実験室から排出する無機系廃液の処理技術としては定評のある優れた方法であるが、これは基本的には重金属イオンを処理の対象としたもので、陰イオンに対しては、まったく処理能力をもたない。にもかかわらず最近の先端技術の研究から発生する、フッ化物イオンやリン酸イオンを含有する重金属系廃液の量が増加する傾向にあり、現有のフェライト法を補完する意味で、この技術の最大の欠点である陰イオン対応を考えなければならなくなった。この研究の主旨は、イルメナイト鉱の硫酸分解で生成する硫酸チタニルの如水分解物が、フッ化物イオン吸着能のあることに着目して、また硫酸分解物のもう一方である硫酸鉄(II)をフェライト法の共沈材硫酸鉄(II)に代替できることを考慮して、フッ化物イオンと重金属イオンの同時処理が可能ではないかということで実験してみた。 硫酸チタニル如水分解物のフッ化物イオン、リン酸イオン吸着能は、現在利用している活性アルミナにくらべ抜群であることがわかったが、重金属イオンとの同時処理は、それぞれの処理の適性pH値の相違-フッ化物イオン、リン酸イオンの吸着適性pH値が4前後であるのに対し、重金属イオンのフェライト反応の適性pH値10前後-から、不可能であることがわかった。 しかし、この硫酸チタニル如水分解物の独立した吸着材としては、フッ化物イオン、リン酸イオンに対し、優れた性能を示し、とくに希薄濃度廃液からのこれら陰イオンの吸着除去に極めて大きな性能を発揮することがわかった。独立の吸着材として利用するため残された問題は、これが液中に分散あるいは沈積したとき、粉化しない一定の強度をもつ顆粒とする方法を探ることである。この研究で吸着機構はともかく,現象的な知見は十分得られたと考えられるので、次はこれを顆粒化して実用的規模で研究を進めたいと考えている。
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