研究概要 |
本研究では, まず比較的大きな二価のカチオンでも容易に動きうるような空間的に粗な結晶構造をとるものを探索した. その結果ジルコン型結晶構造のものが, この条件を満足することが分かった. 今回はこのような構造を持つもののうち, リン酸イットリウムとバナジン酸イットリウムに着目し, これらに導電種となるマグネシウム, 亜鉛, カルシウムなどをリン酸塩, バナジン酸塩として添加して焼成した焼結体について, そのイオン導電性を検討した. X線回析の結果, バナジン酸塩を母体としたものは, どれも母体相と他相との混合相を示すが, リン酸塩を母体としたものでは, マグネシウム, カルシウムを添加した場合に母体と同じ結晶構造の固溶体が得られることが分かった. これらの試料に多孔性白金電極を焼き付け, 2端子複素インピーダンス法により導電率を測定した. その結果, 純粋のYPO4は, 1000°Cでも1×10^<-5>Scm^<-1>程度の低い導電率しか示さないが, 添加物を加えると導電率は著しく増大することが分かった. 特にカルシウムの場合この増大率は大きく, 5モル%程の添加率で約3桁上昇し, 800°Cでは1×10^<-3>Scm^<-1>という値を示した. マグネシウムの場合も同様な傾向が観察されたが, 800°Cでの導電率は3×10^<-4>Scm^<-1>であった. これらの導電体中の導電種としては, 存在する各種のカチオン, 酸化物イオン及び電子が考えられた. そこでカルシウムを添加した焼結体その導電種を検討するために電解を行ったところ, カソード側ではCaDの析出が認められた. またカソード側とアノード側では, それぞれほぼ通電電気量に対応した重量増加と重量減少が観測された. 通電によるこのような変化は, 試料中の導電が主として添加したカルシウムイオンによって行われていることを示すものであった. また, マグネシウムを含む試料についても同様な検討を行ったところ, マグネシウムイオンによって導電が行われていることが明らかになった.
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