本研究では、二価イオン導電体を合成する目的で、これまでにアルカリイオン導電性を示すことが報告されているナシコン、リシコン、ホランダイトあるいはラムゼライト型などの結晶構造を持つ化合物に注目して、これらの可動イオンを二価イオンで置換した焼結体を調製し、これにイオンの導電性がみられるか否かを検討した。母体物質をナシコンやリシコンとし、このNa^+やLi^+をCa^<2+>やMg^<2+>で置換するよう成分を混合した後焼成すると、どの場合も複雑なX線回折パタ-ンが得られ固溶相は得られなかった。これに対し、ラムゼライトおよびホランダイト構造の化合物を母体とした場合は、同様な方法で焼成するとほぼ母体物質に対応した結晶構造が得られた。これらの試料に白金電極を取り付け、インピ-ダンスメ-タ-により導電率を測定した。その結果、両方の系共1000℃で10^<-4>Scm^<-1>以上の導電率を示すことが分かった。この場合、ラムゼライト系ではCa^<2+>で、ホランダイト系ではMg^<2+>で置換した方が導電率は高かった。これらの導電体中の導電種としては、イオンおよび電子が考えられる。そこでそれぞれの試料焼結体を電解質とした電池を構成し、その起電力を測定したところ、ホランダイト系試料では起電力が全く現れなかったが、ラムゼライト系では理論値より若干低かったが、確かに起電力が測定された。これは後者の系がイオン導電体であることを示すものであった。しかしながらこの化合物は低温域では二相に分解するようで安定性に欠けることが明らかとなった。 そので前年度までに見い出したYPO_4およびCaSO_4を母体とした二価イオン導電体を用いて、これらが電池および電解用に使用できるかどうか検討した。その結果、導電性は若干低いという欠点はあるものの、起電力応答特性およびカルシウム生成特性から考えて、これらの導電体は固体電解質としての電気化学的応用が可能であることが明らかとなった。
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