二価イオン導電体を探索し、その電気化学的応用に関する知見を得る目的で実験を行った。その結果をまとめると以下のようになる。 1.空間的に粗な結晶構造をとるジルコン型酸素酸塩のうちリン酸イットリウムは、それ自体二価のカチオンは含まないが、これにたとえばカルシウムをリン酸塩として添加すると、格子間のイオンが結晶中に生成し、これが導電にあずかるようになることが分かった。5モル%Caを添加したものの導電率は、800℃で5×10^<-3>Scm^<-1>であった。マグネシウムでも同様な傾向があらわれたが、導電率はカルシウムの場合に比べて低いものであった。また、バナジン酸塩、ヒ酸塩では、同じ結晶構造をもつにも拘らず、二価イオン導電性が、みられないことが明らかとなった。 2.歪んだ岩塩型構造を持つ硫酸カルシウムを母体とした場合には、これに上と同様に格子間カルシウムイオンが生成するようにリン酸塩を添加固溶させると、カルシウムイオン導電性があらわれることが分かった。2.5モル%Caを過剰に含むものの導電率は1000℃で3×10^<-3>Scm^<-1>であった。この系の場合、硫酸アルミニウムを添加固溶させることでカルシウムイオン空孔を作ることも可能であり、前と同様な導電性が観察されたが、導電率自体は相対的に低くなることが明らかとなった。 3.在来のアルカリイオン導電体のアルカリイオンを二価イオンで置換すると、ラムゼライト系などの特定の化合物の場合のみイオン導電性があらわれることが分かった。しかしながら、これらは低温域では不安定で二相に分解する傾向が強いことが明らかとなった。 4.本研究で見い出した導電体は、電池を構成した時の起電力応答及び電解時のカルシウム化合物の生成から考えて、個体電解質としての電気化学的応用が可能であることが明らかとなった。
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