研究概要 |
ハロゲン化物イオン(X^-=F^-,Cl^-)を多量に含む鉛オキシホウ酸塩、ケイ酸塩およびテルル酸塩系ガラスについて、電気的・機械的および分光学的特性あるいはX線光電子分光スペクトル等を測定し、その結果に基づいて原子充填構造やハロゲン化物イオンの化学結合状態および電気伝導機構について系統的に考察した。 1.ハロゲン化物イオン含有鉛ケイ酸塩ガラスの構造と電気伝導性 バッチ組成30SiO_2・(70ーx)PbO・xPbX_2(X=F,Cl)系ガラスの900cm^<-1>付近のラマン吸収帯の解析から、SiO_4の2量体イオンSi_2O_7^<6->が基本体位であり、X^-イオンはPbとのみ相互作用する自由な状態で存在することが解った。本系ガラスがβーPbF_2結晶と同程度の高い伝導率を示すことはこの構造モデルを支持する。活性化エネルギーを調べると、F^-の移動には結合エネルギーの寄与が大きくCl^-の移動にはガラス網目を押し広げる歪エネルギーの寄与が大きかった。 2.鉛ホウ酸塩ガラス中のハロゲン化物イオンの結合状態と電気伝導 30B_2O_3・(70ーx)PbO・xPbX_2(X=F,Cl)組成のF系ガラスについてのX線光電子分光スペクトルは、BーF結合とPbにのみ束縛されているF(…Pb)の存在を示した。電気伝導率の増加はF…Pb状態のFの増加が要因である。ラマンスペクトルはBーCl結合の不在を示したが、Cl^-イオンが大きいために、Cl系ガラスの電気伝導率は比較的小さい。AlF_3の添加はF^-イオンの移動を妨げる。 3.ハロゲン化物イオン含有テルル酸塩ガラスの基礎的性質 FはすべてTe同士の架橋をし周囲の原子充填率を高めるため、F系のガラス化範囲は狭い上、電導率はFの濃度に依存しない。Cl系ガラスでは、Clは非架橋のCl_tと架橋のCl_bの二つの状態があり、後者が伝導に寄与する。ラマンスペクトルは、PbCl_2の含有量と共に、Te構造単位は三方両錐型Te(O,Cl)_4から三方錐型Te(O,Cl)_3へ変化することを示した。
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