研究概要 |
ホスト炭素繊維として, PAN系, ピッチ系, 気相成長炭素繊維の3種類を用いてX腺回析測定によりキャラクタリゼーションをおこなったが, 気相成長炭素繊維のみが結晶性が発達しており, アルカリ金属-黒鉛層間化合物を合成するのも容易であった. 水素吸収実験は, PAN系炭素繊維(2500°Cで熱処理したもの)から合成されたKCx(x〜18)と気相成長炭素繊維(3000°Cで熱処理したもの)から合成されたKCx(x〜20)についておこなった. いずれの場合も水素吸収量は天然黒鉛などから合成されたKCxよりもはるかに少なく, 吸収速度などもたいへん遅いことが確認された. またデータの再現性においても繊維状でないKCxに較べて劣っていた. これらのことから, 繊維状組織であるために水素分子が繊維末端から繊維軸に沿って拡散して吸収サイトに到達するといったことが予想される. このことは研究計画の時点で予測していたことであり, それを実験的に確認したものである. 以上のような欠点を補うために, あらかじめ炭素繊維に膨張化処理を施して繊維の形状は保存しつつ組織に亀裂をしょうぜしめた後KCxを合成すれば水素吸収挙動が改善されるものと考え, 現在繊維の膨張化処理に関して検討をおこなっている. ひとつの方法としてカリウムとアンモニアを含む三元系化合物とした後, 急激な加熱・排気処理によってカリウムとアンモニアを追い出しつつ炭素繊維を膨張させるプロセスを検討しているが, 最大の問題点は膨張化処理後に繊維中に残存するアンモニアである. これはアンモニアが残留すると水素吸収能が低下することが考えられるためである. 今後膨張化炭素繊維からKCxを合成し, 水素吸収挙動を検討してゆくつもりである. 以上延べたことと併行して, 水素吸収挙動に及ぼすKCxの酸素, 水蒸気, アンモニアなどによる劣化の効果について検討をおこなっている.
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