研究概要 |
高効率の化学的エネルギー変換機器として, 燃料電池の実用化は古くからの夢であり, 近年とくにその研究が盛んである. 燃料電池の実現の成否を支配するものは, いかにして安定で効率的な電極触媒を創るかの問題であると言っても良く, 最も実用段階に近いリン酸型燃料電池でも未だにそれが問題として残されている. 本研究では, とくに溶融塩型燃料電池への適用を念頭において, 熱的・化学的に安定かつ高導電性で多孔質な, 新しい電極触媒担体を探索しようとした. 着想として, 炭素繊維の表層を気相折出法によりTiC化する方法を考え, その実験的検討を行なった. 原料として, ピッチ系, PAN系, レーヨン系など各種出発物質および熱処理温度の異なる10種類の炭素繊維を選び, ArをキャリアーガスとするH_2/TiCl_4混合ガスを導入して赤外線炉で加熱しつつ, 反応の温度, 時間および分圧比を変えながら, TiCの生成條件を調べた. TiCの生成状態は, X線回折, 重量測定, 化学分析のほか, SEM観察によっても検討した. それらの結果, 全ての試料についてTiC焼成の條件を確定することが出来たが, その生成しやすさには炭素繊維の製造履歴の影響が大きい. 低温焼成(〜1,000°C)のものでは, 900°C以下でTiC生成がはじまり, 高温(〜1,300°C)書生では1,100°C以上ではじめてTiCの生成が開始する. 反応の経時変化, 分圧依存性, 生成物の組成(TiC_<0.8〜0.9>)などについても, 多くの知見を得た. 特記すべきは, 活性炭繊の1種において, 0.1μ程度のTiC細繊維が絡む多孔質な組織が得られたことで, 今後, 金属の担体としてとくに検討に値するものと思われる. 次年度の課題として, 金属担持法の検討のほか, さらにWC,Mo_2Cなどの他の炭化物にまで対象を拡げて検討する予定である.
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