62年度は、メタンの酸化カップリング反応によりエチレンを高選択的に合成することを目的とし、次の事項を明らかにした。 1.酸化サマリウム触媒を用いて反応の最適条件を検討した結果、今まで報告された中で最も高いエチレン、エタンの空時収量(3mol/g・h)が得られた。 2.希土類酸化物の中では安価である酸化セリウムにバリウムを添加することにより、酸化サマリウムに匹敵する性能を持つ新規な触媒を得た。 3.塩化リチウム添加酸化ニッケル触媒に関する検討から、エチレンの高選択的合成に対する塩化物の役割を明らかにした。 4.1〜3に記した触媒を用い、反応の速度論的解析から、反応の律速段階は分子状吸着酸素によるCH_4からのHの引き抜き過程であり、そこで生成したメチル種がカップリングしてエタンが生成するという反応機構を提案した。 5.LiNiO_2触媒においては、メタンの解離吸着は容易に進行し、生成したメチル基どうしのカップリングが律速であること、触媒の格子酸素とメタンの反応からC_2炭化水素が選択的に得られることを明らかにした。 63年度は、メタンの部分酸化によりホルムアルデヒド、メタノールを高選択的に合成することを目的とし、次の事項を明らかにした。 1.酸化ほう素と他の酸化物を組み合わせた触媒が、メタンと酸素からのホルムアルデヒド合成に有効であった。特にFeNbO_4ーB_2O_3触媒を用いると、高い選択率および空時収量でホルムアルデヒドが得られた。 2.FeNbO_4ーB_2O_3触媒では、FeNbO_4中の格子酸素と、触媒表面に存在する高酸化状態(>+3)のFeイオンが活性種として寄与している。 3.メタン転化速度のメタン分圧依存性の検討より、酸化カップリング反応、ホルムアルデヒド合成反応、完全酸化反応に共通する高温下のメタン活性化機構を提案した。
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