研究概要 |
本研究は分子ふるい作用やイオン交換能を有するゼオライト薄膜で被覆した修飾電極が表面層にある種の金属イオンを選択的に保持する機能を持たせるには適しているのではないかと考えて, 細孔径の異なる種々のゼオライトを用いた修飾電極を作成し, 特定の金属イオンの保持能力に及ぼすゼオライトの細孔径の影響を調べるとともに, ゼオライト修飾電極に固定した金属イオンをメディエータとして用いる有機電解の可能性を検討したものであり, 本研究によって得られた知見を要約すると次の通りである. 1.ゼオライトの細孔径がおおきいほどイオン効換で取り込まれる鉄イオンの量が多く, ゼオライト修飾電極で電気化学反応に関与する鉄イオンの量も多い. 2.ゼオライト修飾電極での鉄イオンの電気化学反応は電解液のpHが低いほど, 支持電解質カチオンのサイズが小さいほど, またゼオライトの細孔径が大きいほど進行しやすい. 3.銀イオン交換ゼオライト修飾電極ではより顕著な支持電解質カチオンのサイズの影響が見られる. 4.これらのことはゼオライト空孔中での水素イオンを含む平衡反応が電気化学反応に関与することおよび鉄イオンや銀イオンの電気化学反応に伴う電荷の過不足を補償するために支持電解質カチオンがゼオライトの細孔を経て出入りすることで説明される. 5.鉄イオン交換ゼオライト修飾電極でベンゼンとトルエンの電解酸化を行なうと, 短時間の実験ではゼオライト中の鉄イオンがメディエータとして有効に働くが長時間の実験では主に電解液中に溶出した鉄イオンがメディエータとして働き, ゼオライト修飾電極を使用する価値がなくなる. 6.セリウムイオン交換ゼオライト修飾電極でナフタレンの電解酸化を行なうと, ゼオライト中のセリウムイオンがメディエータとして作用し, 電解液中にセリウムイオンを添加した場合に比べてかなり高い電流効率でナフトキノンが生成する.
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