前年度提出した金属酸化物と金属イオンとの相互作用に関するモデルを更に検討した。実験に用いたα-アルミナは溶液中で正に帯電していることを明らかにした。静電相互作用を考慮すると、α-アルミナと亜鉛イオンの間の相互作用は弱いと考えられるが、実験結果は両者の間に強い相互作用があったことを示している。このような事情から、研究のポイントは、正常電の金属酸化物に正常電の金属イオンがどのように相互作用するのかという点に置いた。その結果、二価金属イオンの溶存状態がpHに依存し、亜鉛イオンの場合にはZn(OH)^+の存在が重要な役割を演じているという考えに至った。亜鉛イオンとの相互作用が強いといわれている二酸化マンガンでpH滴定曲線を求め、相互作用の強さを調べたところ、滴定曲線は一見複雑な形であったが、滴定曲線に平坦部が認められ、平坦部のpHはブランク滴定曲線の平坦部のpHより約2低い値であった。△pHが約2ということは強い相互作用を示している。pH滴定法は、金属酸化物ミクロ粒子の懸濁液に適用できるので、有力な実験方法であるが、電気泳動によるミクロ粒子の帯電状態を調べる方法、ミクロ粒子をめっき浴に分散し、負帯電の陰極に金属と共に析出するミクロ粒子の量を求める方法、ミクロ粒子とは大きく異なるが、ガラス板を用い、ガラスの応力腐食に及ぼす溶液中の金属イオンの影響を調べる方法を採用し、実験手法、実験系は異なるものの、相互作用について統一的扱いができることを明らかにした。これらの結果は、概要には表しにくく、研究成果報告書に示した。モデルを明示し、そのモデルを検討する形で、固液界面の関わる現象を少し広めに取り上げ、予想以上の成果を得たと癒える。なお、熱量測定で、相互作用に基づく結合のエネルギーを求める試みを繰り返したが、反応量が非常に少ないことと、反応の速度が遅いことで、期待したような結果は本年度も得られなかった。
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