当初計画で購入を申請していたガスクロマトグラフは計画通り購入され、反応後の生成物同定用として順調に稼動している。本年度の研究はほぼ申請時の計画通り進行し、以下の点が明らかとなった。 1.プロピレンおよびブテンの水和反応を超安定Y型ゼオライト上で実施すると、それぞれアセトン、エチルメチルケトンが選択的に生成した。これは水和脱水素反応を経由するオレフィンの酸化であり、新しい型の固体触媒反応とみなせる。 2.超安定Y型ゼオライトに塩基性酸化物、特にCaO、MgOを0.1モル担持させるとプロピレンの酸化の定常活性が向上する。また、活性が安定した後の収率は、担持した酸化物の陽イオンの電気陰性度に依存し、電気陰性度が低いほど活性は向上する。 3.水中懸濁系での接触水和ではイソブテン→tert-ブタノールの反応が高収率で進行する。また、反応速度は反応温度70℃で最大を示す。 4.水中懸濁系でのイソブテン水和活性はAl含有量に山型に依存する。 5.イソブテンの水和を高圧で行うことによる常圧での活性の5倍以上の活性を得ることができる。 6.高圧系でのイソブテン水和活性はAl含有量に依存し、Al含有量の低下に伴って活性は向上する。 7.常圧系、高圧系どちらも、ゼオライト触媒による水和反応においてはイソブテンの反応性がノブテンに比べて極めて大きい。 8.ゼオライトの細孔径をシラン表面固定化法で処理することにより、分子径の異なるガスの吸着持性を制御できる。 本研究では水中懸濁系でプロトン型ゼオライトが高い触媒活性を示すこと、この反応は高圧にすることでさらに活性が向上することが明らかになった点が特に注目される。
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