光励起吸着種の活性を利用した高分散固定化触媒の調製とその光触媒活性

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62550595
• 研究機関: 大阪府立大学
• 研究代表者: 安保 正一 大阪府立大学, 工学部, 講師 (70094498)
• キーワード: 固定化触媒 / バナジウム酸化物 / 光触媒活性 / 光励起吸着種 / 光触媒異性化反応 / 高分散担持触媒 / リン光収率 / 2ーブテン

研究概要

前年度(昭和62年度)の研究結果を踏まえ、本年度は、光励起により固定化したバナジウム酸化物触媒の励起状態と光触媒活性の特徴に関し、2ーブテンの光触媒異性化反応に付いて検討した。
光励起により固定化したバナジウム酸化物の電荷移動励起種からのリン光収率は表面のバナジウム濃度とともに直線的に増加し、バナジウム種はいずれも極めて均質で高分散な状態で担持されていることが明らかになった。光励起により固定化したバナジウム酸化物触媒上でトランスー2ーブテンの異性化が光触媒反応として進行することが解った。光触媒異性化反応において生成するシスー2ーブテンと1ーブテンの収量と、バナジウム触媒のリン光収率との関係には極めて良い直線関係が見られた。また、リン光の減裏曲線から求めた電荷移動励起種の寿命は、室温では150μ秒を示し、2ーブテンの圧力の増加とともに短くなることが解った。これらの結果は、光励起によりバイコールガラス上に固定化された四配位バナジウム酸化物種の電荷移動励起種の三重項状態が異性化反応に密接に関連し、これが活性種として作用していることを初めて直接的に示した。この光触媒異性化反応の量子収量は、従来の含浸法で調製した触媒上での量子収量に比較して高いことも解った。これは、光励起固定化法で調製したバナジウム酸化物触媒においては、活性種としての四配位バナジウム種の分散性と均質性がすぐれており、光エネルギーの失活が起こり難く、光触媒としての活性が高くなるものと考えられる。
このように、光励起による固定化という方法で調製された担持触媒は、担体表面との化学結合を通して、均質な活性サイトが担体上に高分散状態で形成されることから、高活性・高選択性を持つすぐれた触媒になることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Anpo,Masakazu: Chemistry Express. 3. 403-406 (1988)
• [文献書誌] Anpo,Masakazu: Journal of Luminescence. 40&41. 829-830 (1988)
• [文献書誌] Anpo,Masakazu: Journal of Chemical Society,Faraday Trans.I. 84. 2771-2782 (1988)
• [文献書誌] Anpo,Masakazu: Journal of Physical Chemistry. 92. 438-440 (1988)
• [文献書誌] Anpo,Masaakazu: Materials Chemistry and Physics. 18. 465-484 (1988)
• [文献書誌] Anpo,Masakazu: Chemistry Letters. No.4. 701-704 (1988)
• [文献書誌] Anpo,Masakazu: Journal of Chemical Society,Faraday Trans.I. 84. 751-764 (1988)
• [文献書誌] Anpo,Masakazu: Journal of Chemical Society,Faraday Trans.I. 85. (1989)
• [文献書誌] Anpo,Masakazu: Research on Chemical Intermediates. 9. 67-106 (1989)
• [文献書誌] Anpo,Masakazu: Journal of Physical Chemistry. 93. 1187-1189 (1989)
• [文献書誌] 安保正一: 工業材料. 37. 56-61 (1989)
• [文献書誌] 窪川裕: "光触媒" 朝倉書店, 6-115 (1988)
• [文献書誌] Anpo,Masakazu: "Photochemistry on Solid Surfaces" Elsevier, 119-137 (1989)
• [文献書誌] Anpo,Masakazu: "Structure and Reactivity of Surfaces" Elsevier, (1989)