不活性な担体上に吸着した種々の遷移金属化合物を光励起により活性化し表面に固定化する方法は、高分散な固定化担持触媒の新しい調製法として期待できる。本研究では、担体として光透過性にすぐれた多孔性バイコールガラスを用いそれに吸着したTiCl_4、MoCl_5、VOCl_3、を光励起で活性化し表面o-H基と反応させ固定化しその後の処理をへて固定化担持酸化物触媒を調製するとともに、この方法で調製した触媒の光触媒としての活性を検討することを目的として遂行したものであり、次の成果を得ることができた。 光照射により、MoCl_5を除いて、TiCl_4とVOCl_3は活性化され表面o-H基と反応しTiCl_3、VOCl_2として固定化されることが解った。これらの表面上での濃度と分散性は、担体上の表面o-H基濃度、化合物の吸着濃度、UV光照射時間などにより制御できることが明らかになった。特に、吸着したVOCl_3を光照射すると表面OH基と低温においても容易に反応し、VOCl_2が固定化できその後の処理により高分散な状態で固定化担持バナジウム酸化物触媒が調製できることを初めて見い出した。このことは、四配位状態に存在するV=O(バナデーィル基)上での電荷移動励起三重項からのリン光の収率が高く、またこの寿命が長いことからも明らかになった。この方法で調製した高分散固定化バナジウム触媒を光触媒として2-ブテンの異性化反応が効率良く進行することが解った。この時、光触媒異性化反応の収率と上記したリン光の収率との間には良い直線関係が存在することを見いだし、担持バナジウム酸化物の光触媒活性はV=O基の励起状態が密接に関連していることが直接検証できた。 このように、本研究は、光励起した吸着種の活性を利用して高分散な固定化触媒が調製できることを示すと共に、この方法で調製した触媒が高い光触媒活性を有することを明らかにし、本方法が触媒調製における新しい方法として応用できることを示した。
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