研究概要 |
層状化合物が近年新しい機能性材料として活発に研究されている. 結晶性層状化合物は規則正しい分子配列を持ち, 層間に限られた空間を持つ構造材料であることから興味が持たれ, 分子形状選択性を持つ新しいイオン交換体あるいは触媒材料として期待されている. リン酸ジルコニウム(ZrP)も層状化合物の一種であり, イオン交換やインターカレーションによって層間隔や触媒活性種をコントロールすることが可能である. 62年度は主に層間距離の異なるZrpを高純度で合成し, その合成法の確立と構造解析を行った. 合成出来たZrPはε-ZrP(0.56nm), α-ZrP(0.76nm)およびγ-ZrP(1.22nm)など層間隔の異なる3種のZrPを再現性よく合成する方法が確立出来, XRDや1Rから得られた知見の他^<31>P-MARNMRでリン原子の囲りの環境の解析を行い重要な知見を得ることが出来た. 合成したZrPを用いてアルケン, シクロプロパンの異性化, メタノールからメチルアミンの合成など典型的な固体酸触媒反応を行ったところ, 触媒を500°C前後で加熱前処理すると前述の全ての反応で高活性を示した. 反応機構を詳細に調べた結果, 反応に寄与する活性点はリン酸基のもつプロトンであり, 高活性を示す触媒は低活性の触媒と比較してNMRのケミカルシフト値が高磁場側で観測されることを見い出した. このことはリン原子囲りの電子密度が加熱処理によって高まりプロトン化の能力が飛躍的に高まったことを示しており, 活高性な触媒を設計する方法論が確立できた. 特にγ-ZrPを500°Cで加熱処理すると層間隔は8.6〓と短くなるが2/3のPOH基が層間でP-O-P結合に変化し, 700°Cまで安定に存在することから, P-O-P結合がピラーの役割をはたしていて, 新規な触媒材料としての応用が今後期待できる. 63年度はZrPのインターカレーション能を主に調べ, 無機合成だけでは困難なさらに層間距離の大きな化合物を合成することを目的とする.
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