レーザーは、単色性、強い光子場、超短パルス発振などの、通常光では得られない特徴を持った光源であり、これを連鎖反応の開始仮定等に用いて反応を制御する試ろみは、合成化学等にとって興味ある研究過程である。 本研究では、主要な対象として、メタンからメタノールへの連鎖的な反応機構による一段合成を選んだ。また酸化的な連鎖反応の究極の一つは燃焼と考えられるので、メタノールの発火過程をレーザー照射で開始させ、その制御の可能性を併せ検討した。 1.メタンからメタノール合成の実験的な検討のために、温度可変の石英製反応セルを試作し、この中へメタンと酸素、さらにレーザー光の吸収剤としての一酸化二窒素を添加し、エキシマーレーザー光(193nm)により反応開始させた。反応温度は、室音-300℃、圧力は300-600Torrである。生成物は、メタノールを含め幾種かの含酸素化合物、C_2、C_3の炭化水素類、CO、CO_2であった。メタンの転化率とメタノールの選択率は酸素の共存下で増加し、このことから、連鎖反応が進行し、メタノールの合成にも有効に働いていることが明らかになった。同時に、計算機シミュレーションの結果とも併せ、メタノールの一段合成の可能性が示唆された。 燃焼開始の制御の可能性を、メタノール/空気の予混合気のレーザー発火過程につき検証した。ノズルバーナー上の発火をレーザー光(193nm)で開始させ、この時必要なレーザーフルーエンスの当量比依存性を求め、これを計算機シミュレーション結果と併せ検討した。この結果、レーザー発火では、熱とラジアル種の同時的生成が特徴であることが結論された。 以上、2種の反応系につき、レーザー光照射による酸化的連鎖反応制御が可能であることが示された。
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