研究概要 |
石炭系重質油から付加価値の高い芳香族炭化水素ケミカルズを効率よく得る技術の開発と、脱アルキル反応機構の統計動力学的解析を試みる目的で、石炭モデル化合物および溶剤精製炭(SRC)の脱アルキル反応を行なった。結果を要約すると以下のようになる。 1.赤平歴青炭およびWandoan亜歴青炭から得たSRCのキューリーポイントパイロリシス-G.C.-M.S.分析を行なった結果、赤平SRCのヘキサン可溶分(HS)のうち88%、ヘキサン不溶ーベンゼン可溶分(HI-BS)のうち57%が、またWandoan炭SRCのHSの91%、HI-BSの54%がG.C.で分析可能な単純な芳香環骨格を持ち、ナフタレン、ビフェニル、ジベンゾフラン、フルオレン、およびそれらのアルキル置換体であることが判明した。 2.SRCの構造解析結果を踏まえ、アルキルナフタレン(2-メチル、2-エチルおよび2,6ージメチル置換体)9ーメチルアントラセンをモデル化合物として選び、オートクレーブ中初期水素圧2.0MPa、反応温度550℃で反応時間0.5ー3時間脱アルキル反応を行なった。その結果、脱アルキル反応速度に対してアルキル鎖長は大きな寄与をせず、芳香環の縮合度および触媒活性の寄与が大きいことが明らかとなった。反応中に生成する活性ラジカルは水素化により安定化されなければならず、水素化能の高いNi-Mo-Co/SiO_2/Al_2O_3触媒がLewis酸性のCr_2O_3/MgO/Al_2O_3やLa-交換Y型ゼオライト等の触媒よりも好結果を示し、赤平SRCのHSの脱アルキル反応ではそれぞれ12.0、10.1および8.5%のナフタレン収率を与えた。 3.メタノール溶媒を用い、常圧水素気流中で赤平SRCの脱アルキルを行なった結果、HSおよびベンゼン可溶分(BS)ともに約12%のナフタレン収率を示し、溶媒からin-situで発生した水素が、活性ラジカルの安定化に効果的に働くことがわかった。
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